食物アレルギー

食物アレルギーとは?

食物アレルギーとは特定の食品に含まれるアレルゲンに体内の免疫機能が反応し、体に様々症状を表すものです。通常体内に食物が取り込まれても免疫は反応しませんが、免疫機能に何らかの異常があると、その食べ物を害とみなし排除しようとします。それによって様々な症状が出ます。なおアレルゲンは皮膚接触や注射などから侵入することもあります。アレルゲンが体内にあると免疫機能はIgE抗体を血液に送り込みます。IgE抗体は皮膚や粘膜にあるマスト細胞とくっつき、IgE抗体がアレルゲンを捕えるとマスト細胞からヒスタミン、ロイトコリエンが放出され、アレルゲンを攻撃します。そしてこのヒスタミン、ロイトコリエンがかゆみ、炎症、鼻づまりなどの症状を引き起こすのです。

大人になってからでも発症する?

大人がかかりやすいアレルギーとして、口腔アレルギー症候群があります。これは花粉症の方がかかるアレルギーです。生の果物や野菜、大豆などを食べた後に唇やのどなどに痛みやかゆみを感じます。花粉と似た構造を持つアレルゲンを摂取すると交差反応を起こして、発症します。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは10代から20代にかけて起こりやすい症状で男子に多いです。特定の食べ物を食べた後に運動をすると症状が出ます。中学生の6000人に1人の割合でみられます。呼吸困難を起こしやすいので救急車を呼ぶなど迅速な処置が求められます。大人の多くはアレルギーがあっても自己判断で済ませてしまうことが多いのですが、将来的なリスクが大きすぎます。命にかかわることもあるので急いで専門家に見てもらいましょう。

アレルギーの原因食品

アレルギーの原因はほとんどが鶏卵、牛乳、小麦の3種類で3大アレルギー食品といっても過言ではないでしょう。内訳で見ると鶏卵38.3%、牛乳15.9%、小麦8%と3つの食品で5割近くを占めています。以下で上位三品目のアレルギーの特徴や対処法を詳しく伝えたいと思います。他には甲殻類、果物、そば、魚、ピーナッツなどがあります。また、アレルギーの原因食品は年齢によって変化しますが、それについては後述します。

上位3品目の特徴

それでは全年齢による食物アレルギーの原因の上位を占めた鶏卵、牛乳、小麦によるアレルギーにはそれぞれどういった特徴があるのでしょうか。原因別に詳しく見ていきたいと思います。今後の参考にしてみてください。

鶏卵アレルギー

鶏卵アレルギーのほとんどは卵白に含まれるたんぱく質です。そのため、卵黄よりも卵白のほうがアレルギーが出やすいです。卵白は除去されることが多いです。卵のアレルゲンは熱に弱いので高温で調理したほうがアレルギーは出にくいです。生卵の摂取には気をつけましょう。鶏肉や魚卵は基本的に除去する必要はありません。鶏卵は質の良いタンパク質を含んでいるので、肉や魚、大豆などで代替してください。鶏卵は多くの加工食品に含まれているので、食品表示に注意してください。卵白に含まれるリゾチームはアレルゲンの一種ですが、市販の総合感冒薬などに使用されているので購入するときは薬剤師に相談してください。アイスクリームやマヨネーズに含まれる鶏卵は十分に熱していないので注意してください。

牛乳アレルギー

牛乳アレルギーは基本的にタンパク質のカゼインが原因です。カゼインは耐熱性があるので過熱しても発酵してもアレルギーの起こりやすさは変わりません。ですから、ヨーグルト、チーズにも注意する必要があります。牛肉はアレルゲンが異なるので除去する必要はないです。牛乳を除去するとカルシウムが不足するので他の食品で補いましょう。大豆や小魚、青菜などがカルシウムが豊富です。加工食品に使用されている「乳化剤」「乳酸菌」「乳酸カルシウム」は牛乳とは関係ないので除去する必要はありません。「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「はっ酵乳」これらは牛乳が含まれているのでアレルギーの方は気をつけてください。粉ミルクも牛乳由来が多いので使用は控えましょう。

小麦アレルギー

パンや麺の多くは小麦で作られるのでアレルギーのお子さんの主食はコメを中心に考えましょう。米粉パンでも大丈夫です。ただ製造過程でグルテンを使用することがあるので米粉パンはグルテンフリーを選んでください。麺の代わりに春雨を使用するなど様々な工夫ができます。醤油は原材料に小麦が使用されていますが、醸造の過程でタンパク質は分解されるので除去する必要はありません。麦芽糖は麦という漢字が使用されていますが、小麦とは関係ありません。麦茶もたんぱく質は微量なため基本的に除去する必要はありません。小麦以外の食品をバランスよく摂取していれば栄養不足は起こりにくいです。なお小麦は食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として頻度が高いです。

原因食物は年齢とともに変化する?

先ほども書いた通りアレルギーの原因物質は年齢とともに変化します。子供のころは鶏卵、牛乳、小麦がほとんどですが、成人に限ってみると甲殻類、小麦、果物となっています。全体では原因の4割近くを占める鶏卵も成人では6.6%まで下がってしまいます。牛乳についても全体では15%を占めますが、成人ではほとんどみられなくなります。また成人でトップの甲殻類は1歳まではほとんど見られません。成人で3位の果物も子供ではほとんど見ることはないです。

アレルゲン表示

平成13年から食品衛生法に基づいて、加工食品のアレルギー表示が義務付けられています。発症頻度が高い、または重篤な症状を起こしやすい成分については微量でも含んでいれば表示しなければいけません。現在は表示が義務付けられている特定原材料が7品目、推奨されている原材料が21品目あります。ただ7品目以外のアレルゲンについては表示されない可能性もあるので注意が必要です。紛らわしい表示も注意が必要です。例えば卵殻カルシウムは卵の殻のことなので卵アレルギーの方でも問題はありません。

特定原材料 7品目

では実際にはどのようなアレルギー物質が表示されているのでしょうか。現在表示する義務がある特定原材料は7品目あります。全体で特に患者の数が多い、卵、乳、小麦、そば、エビ、カニと患者の数はそれほどではないのですが、重篤になる方が多い、落花生の7つです。ただこの7品目が含まれていても表示されないこともあるので注意が必要です。まず店頭で量り売りしているパン、総菜、そしてアルコールです。また、1グラム当たり数マイクログラムに満たない場合も表示義務は免除されています。

特定原材料に準ずるもの 推奨20品目

義務ではないが表示が推奨されている特定原材料に準ずるものは21品目あり、可能な限り表示をするよう努めることとされています。表示が推奨されているのはあわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ゴマ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、バナナ、まつたけ、モモ、山芋、リンゴ、ゼラチン、そして令和元年9月に新たにアーモンドが加わりました。推奨品目は義務ではないので表示するかどうかはメーカーの判断に任されています。

アレルギー表示は注意が必要?表示対象は加工食品と添加物のみ

気を付けなければいけないのは特定原材料が含まれていても表示されない場合があるということです。それは店頭で計り売りしている総菜や、パンなど、そしてアルコールです。また総タンパク量が1ミリリットル当たり、数マイクログラム、1グラム当たり数マイクログラムであれば表示する義務はありません。レシチン(卵由来)は卵由来ですが、レシチンとだけ表記またはレシチン(大豆由来)と書いてああれば問題はないのでご安心ください。卵殻カルシウムは卵由来ですので気をつけてください。ホエイ、カゼインは乳由来ですのでお気を付けください。乳糖も乳由来です。乳化剤、乳酸菌、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウムは乳ではないので安心してください。グルテン、デュラムセモリナは小麦由来です。麦芽糖や酵母は小麦ではありません。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーの症状の出現頻度は皮膚の症状が89.6%と圧倒的に高いです。これはアレルギーになると89.6%の確率で皮膚症状が現れるという意味で全体の割合を示すものではありません。呼吸器系が32%、粘膜27.9%、消化器17.9%です。一番危険なのはショック症状で11.3%あります。日本では毎年アナフィラキシーショックで3人ほどの方が亡くなっています。(データは平成 20 年度厚生労働科学研究班報告による。)

食物アレルギーの5タイプ

一口にアレルギーといっても色々なタイプがあり、食物アレルギーは5つのタイプに分類されます。それぞれどういった症状で何が違うのか、関連性はあるのか、原因は何なのか、下記で詳しく説明していきたいと思います。

新生児・乳児消化管アレルギー

粉ミルクに含まれるたんぱく質によっておこるアレルギーで、下痢、血便、嘔吐などの症状が出ます。症状は粉ミルクを飲んでから24時間以内に現れます。この症状が出たら医師の指示でアレルギー用ミルクを用います。1歳で半数、2歳でほとんどが治ります。まれに母乳の乳児に現れる場合があります。症状が体重増加不良のみの場合も20%ほどあるので注意が必要です。6%は重症であり、発達障害を起こす場合があります。発症にIgEを必要としないので診断は困難です。

即時型食物アレルギー

原因となる食べ物を食べて2時間以内に発症します。年齢を問わずに発症します。最も患者が多いのは0歳から1歳であり、年齢とともに患者数は減っていきます。原因となる食物は0歳では鶏卵が多く、牛乳。小麦の3つで9割になります。症状は皮膚が多く、9割近くの方に起こります。咳や吐き気など人によって様々な症状が起こります。ときにアナフィラキシーが起こり、命に危険を及ぼすこともあります。症状が軽い場合でも自己判断は辞めて、医師の判断を仰ぎましょう。

食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

生後3か月頃までの赤ちゃんで顔面から始まるアトピー性皮膚炎が見られる場合には食物アレルギーを合併していることがあります。アトピー性皮膚炎と診断されてステロイドを塗ったり、皮膚を清潔に保ったりしても症状が2か月くらい改善しない場合には食物アレルギーを疑いましょう。アレルギーの原因は鶏卵、小麦、牛乳が多いです。母乳に含まれるアレルゲンが原因でも母親の食事に制限が加わることはあまりないです。仮にあっても期間は長くはならないのが一般的です。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

主に学童期以降に見られ、特定の食物を食べて数時間以内に運動をすると症状が出ます。食べ物を食べただけでは症状は起きません。昼食後の休み時間や、5時間目の体育の時に起きやすいというデータがあります。10~20歳代に多く、男子の方が多いです。中学生の6000人に1人の割合で報告されます。症状は呼吸困難や咳などで進行が速いので約半数が血圧低下でショック症状を起こします。一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。

口腔アレルギー症候群(OAS:Oral Allergy Syndrome)

生の野菜や果物、大豆などを食べた後に口の中、のど、唇などにかゆみや痛みを感じます。このアレルギーは花粉症と関連があり、花粉症の原因の花粉と似た構造のアレルゲンを持つ食物を食べた後に交差反応を起こします。症状は軽いことが多いですが、アナフィラキシーを起こした例も報告されています。このアレルギーの場合、野菜や果物は加熱すれば症状は起きにくいですが、加熱してもアナフィラキシーを起こした例もあるので注意が必要です。

もし発症してしまったらどうするべきか?

食物アレルギーが出たと思ったらまずはすぐに行院に行きましょう。自己判断は危険です。蕁麻疹がでても、アレルギーだとは断定できません。食物を自己判断で除去する必要はありません。不要な除去を増やすだけです。

自己判断は避けて、まずは診断&検査

先にも書きましたが、まずは病院に行きましょう。自己判断は絶対にやめてください。必ず専門医に診てもらってアレルギーかどうかの判断を仰いでください。病院ではまず食習慣や発作時の状況などの問診が行われます。そして皮膚検査や血液検査で原因を特定します。皮膚検査では皮膚に傷をつけて、試験用の卵や牛乳を垂らして、反応が起こるかどうかのチェックをします。血液検査ではIgE抗体が血流中にあるかどうかを調べ、原因物質を推定します。ある物質に反応するIgE抗体があれば、その物質が原因だと推定できます。しかしこれはあくまでも推定なので最終的には食物負荷試験を行います。

食物負荷試験で耐性を調べる

食物負荷試験とは本人が現在摂取していない食物を食べてアレルギーが出るかどうかを診断する検査のことです。お子さんは耐性をつける場合もあるので本当に食べていいのか、いけないのかを試験します。試験はあらかじめ計画された量を少しづつ摂取します。アレルギー反応が起きたら摂取を中止して治療を行います。アレルギー反応が起きない場合は計画通りに摂取して検査を終えます。食物負荷試験ではアナフィラキシーを起こす場合もあるので必ず医師の監修で行ってください。基本的には日帰りですが、アレルギー反応の程度では数日間入院することもあるので注意してください。

必要最小限の除去と医師の栄養指導

食物アレルギーには治療薬がないので医師によって原因食物を除いた食生活を指導されます。ただし、除去は必要最低限にする必要がります。食物除去中に特定の栄養素が不足しないように、代替食品を基本に栄養指導を医師に行ってもらいます。例えば牛乳アレルギーの場合は牛乳のたんぱく質を加水分解したアレルギー用ミルクを代替してカルシウムを摂取するなどです。食物を除去して終わりではなく、代替食品で健康的で楽しい食生活を送るのも治療の一環です。

食物アレルギーの食事対策

鶏卵によるアレルギーの場合、鶏卵は、ハンバーグのつなぎや揚げ物の衣、お菓子などにも使用されているので注意が必要です。つなぎにはパン粉などを使用しましょう。また、卵を使用しなくても衣はできます。鶏卵はたんぱく質が豊富ですが、肉や魚、大豆製品などで補えば栄養状態の心配はないです。牛乳のアレルギーの場合カルシウムが不足しにように注意してください。牛乳はパンやマーガリンにも含まれています。カレーやシチューのルーにも含まれています。カルシウムは豆腐、豆乳、納豆、小魚などで補いましょう。小麦によるアレルギーの場合、炭水化物が不足するのでコメや雑穀などで補います。また。小麦粉の代わりに米の粉を使用することができます。

まとめ

食物アレルギーは主に子供時代に起きますが、大人になってから発症することもあるので注意してください。アレルギー反応が起きたと思ったら自己判断は絶対にやめて医師の診断を受けてください。アナフィラキシーを起こしたらすぐに救急車を呼んでください。アレルギーは薬がないので特定物質を除去する必要が出るので特定の栄養素が不足しないように注意しましょう。現在では様々な代替食品があるのでそれほど不自由な食生活にはなりません。

プロフィール

松田 千波(Chinami Matsuda)管理栄養士ブロガー兼ライター
管理栄養士として委託会社での病院勤務、障がい者施設経験を持つ。心理学、がんの栄養学、栄養士の働き方についてSNSとブログで発信中。

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