タンパク質って、とりすぎたらどうなるの?

タンパク質の役割

タンパク質は筋肉や内臓、血液、皮膚、髪などを作る素です。筋肉が細くなったり、肌のハリやツヤがなくなる、髪がガサガサになるのは、体にタンパク質が足りない証拠です。
筋肉や内臓を動かすために必要な酵素やホルモン、体を守る免疫などもタンパク質でできています。見た目の変化がないので気づきにくいですが、「最近疲れやすいなぁ」「今年はよく風邪をひくなぁ」というときはタンパク質が足りなくて不調になっている可能性もあります。
それから精神面でもタンパク質は重要です。達成感を得られたときに出るドーパミンや、精神を安定させるセロトニンなど、神経伝達物質もタンパク質でできています。足りないとやる気が出ない、ずっと不安な気持ちが続いてしまうということがあります。

タンパク質はどのくらいで摂りすぎなのか?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18歳以上の男性の適正摂取量は65g、女性の場合は50gです。運動量にもよりますが、摂りすぎだといわれる量は男性で150g、女性で115gくらいだそうです。
ただここに落とし穴があって、人間が1食で吸収できるタンパク質の量は20gと言われています。夜ご飯だけでタンパク質を一気に摂るぞー!とがんばったりするのは間違いなんです。
タンパク質20gを摂取するには、牛肉だと100g、たまごだと4個、納豆だと3パック、牛乳だと600mlくらいになります。1日150gもタンパク質を摂取するのは難しいですが、1食20gはすぐに超えてしまうので、案外簡単にタンパク質の摂りすぎは起こっているんです。

タンパク質の摂りすぎで起こる症状

タンパク質の摂りすぎって案外身近な問題かもしれません。どんな症状が起こるのか、これから紹介していくので、あなたの体にも起こっていないかチェックしてみてください!

内臓疲労が起こる

内臓疲労とは、暴飲暴食や運動のし過ぎで、胃腸や肝臓が疲れてしまった状態のことです。暴飲暴食した次の日に便秘や下痢になったり、運動してしばらくたっても「なんだかだるいなぁ」と感じることがあったと思います。
たとえ暴飲暴食していなくても、揚げ物ばかり食べたり野菜を食べなかったりすると、胃に負担がかかるし、腸内環境も最悪なので内臓疲労は起こります。
内臓疲労の原因は、主にタンパク質を分解したときにできるアンモニアです。タンパク質は腸の悪玉菌の大好物で、アンモニアなどの有毒物質を作り出して腸の動きを悪くします。そして肝臓がその有毒物質を分解して尿素するので、普段のお仕事である栄養の貯蔵や供給、免疫を作ったりするのがおろそかになり、だるさや疲れが抜けないのです。

蛋白尿になる

蛋白尿とは、文字通り尿にタンパク質が残っている状態のことをいいます。本来は腎臓のろ過機能でタンパク質が出てくることはありません。一時的な高熱などの体調不良の場合もありますが、腎臓が疲れている・機能が悪くなっているという証拠になります。
蛋白尿のメカニズムは、摂りすぎたタンパク質を肝臓が尿素に変え、それをろ過する腎臓が目詰まりを起こしてしまい、最終的にろ過できなくなってタンパク質ごと尿に出してしまうというものです。
そして蛋白尿の恐ろしい点は、高血圧を引き起こすことです。タンパク質のように大きな分子のものがろ過部分を通るのは、体にとってものすごく負担になります。そのため、血流を増やして通らせようとホルモンが分泌され、血圧も上がってしまうのです。

尿路結石のリスクが高まる

尿路とは、腎臓でろ過された尿が尿管・膀胱を通って尿道から排泄されるまでの間のことをいい、尿路の中でシュウ酸や尿酸がカルシウムと結びつき、結石ができることを尿路結石といいます。
結石ができても尿でスムーズに排出されれば問題はありません。ですが、腎臓や尿管で留まってしまうと、お腹の痛み、血尿を引き起こします。
どうして結石ができるかというと、タンパク質が原因の1つにあります。肉などを食べると、シュウ酸や尿酸などの物質が体の中に増えます。これらはカルシウムと結びついて便として出ていきますが、多すぎると尿に出てきて尿中で結石を作り尿路結石になります。
予防するためには「結石の素になるタンパク質を摂りすぎない」「尿の成分を薄めるために水をたくさん飲む」の2つの行動をがんばりましょう。

腸内環境が乱れる

腸内環境が乱れる原因はなんといっても悪玉菌です。腸の中には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類の菌が住んでおり、善玉菌か悪玉菌のどちらか多い方に日和見菌も協力するという、超多数決構造になっています。
悪玉菌を増やす原因は動物性のタンパク質、つまり肉や魚、乳製品の摂りすぎです。悪玉菌が多いと腸の中がアルカリ性になるため、病原菌が増殖しやすくなって免疫力が落ち、疲れやだるさが抜けなくなります。
そのほか、悪玉菌の作り出すアンモニアや硫化水素などの有毒物質のせいで、腸の蠕動運動(便を外に押し出す動き)が悪くなり便秘になる、体臭や口臭がきつくなる、がんになる可能性が高くなるなど、悪いことずくめです。

アトピー性皮膚炎になる可能性がある

アトピー性皮膚炎って関節まわりの掻きにくいところがかゆくて、治ったり再発したりですごく嫌ですよね。原因は解明されていませんが一説には食べすぎ、とくにタンパク質の摂りすぎが大本の原因だと言われています。
なぜタンパク質の摂りすぎがダメかというと、人間はタンパク質がアミノ酸まで分解されて初めて栄養素として使えるのに、この作業はとっても体に負担がかかる上、作業が間に合わなかったタンパク質はすべて毒素になるからです。
そして血の巡りがいい頭・顔を含む上半身に貯まりやすいので、皮膚炎になる可能性が高いと言われるようです。
この状態が続くと、適正量のタンパク質すら分解することができなくなって、慢性的な皮膚炎でかゆくて不眠になる、皮膚以外の気管などにも毒素が貯まって炎症を起こしたりします。

ニキビができやすくなったり便秘が起こるってホント?

ホントです。タンパク質は腸の中で悪玉菌のえさになって、毒素を作るとお話してきましたね。悪玉菌が増えると善玉菌が減ってしまうのですが、そんな善玉菌の仕事は以下の通りです。

  • 病原菌を減らす
  • ミネラルの吸収を促進して体を整える
  • 腸の蠕動運動を活発にする
  • 悪玉菌が作る有毒物質の量を減らす

つまり善玉菌が多いと、お肌を傷つける敵がそもそも少ないのと、ちょっとの攻撃では傷つかないバリアができているんです。便秘に関しても、便がいる腸の動きが活発だから便秘になりにくいですよね。

タンパク質を摂りすぎてしまったらどうすべき?

タンパク質を摂りすぎてしまうと、肝臓・腎臓・腸にとくに負担がかかるのでそれをケアすることが重要です。
腸ではタンパク質を摂りすぎると悪玉菌が増えてしまうので、それを退治する善玉菌を増やしましょう。善玉菌のえさとなる食物繊維が豊富な野菜や、善玉菌の1種の乳酸菌を含むヨーグルトなどの発酵食品を食べるといいです。
腎臓では、タンパク質が分解されてできた尿素をろ過するのに大忙しです。水をたくさん飲んで、血液や尿に含まれる尿酸や尿素を薄めて負担を減らしましょう。
肝臓は脂質の分解にも重要な内臓なので、タンパク質を摂りすぎた日は脂質が多い物を食べるのは控えてください。あと疲労物質である乳酸を分解するのも肝臓なので、「カロリーを摂りすぎた!運動しなきゃ!」と過酷なトレーニングをすると逆効果なので控えましょう。

プロフィール

松田 千波(Chinami Matsuda)管理栄養士ブロガー兼ライター
管理栄養士として委託会社での病院勤務、障がい者施設経験を持つ。心理学、がんの栄養学、栄養士の働き方についてSNSとブログで発信中。

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