ヴィーガンって何?健康に良いの?特徴やメリットなどを解説

ヴィーガンとは?

ヴィーガンは菜食主義における分類の一つです。菜食主義は動物性食品の摂取に関する許容範囲によって細分化されており、大きく分けると「ヴィーガン(Vegan)またはピュア・ベジタリアン」、「ラクト・オボ・ベジタリアン」、「ラクトベジタリアン」、「オボベジタリアン」の4つに分類できます。「ラクト(Lacto)」は乳製品、「オボ(Ovo)」は卵製品を表します。つまり、「ラクト・オボ・ベジタリアン」は卵および乳製品と野菜を、「ラクトベジタリアン」は乳製品と野菜を、「オボベジタリアン」は卵製品と野菜を摂取する食生活を実行します。これに対し、ヴィーガンまたはピュア・ベジタリアンは「完全菜食主義者」と訳され、最も厳格に動物性食品の摂取を制限した食生活を実践します。肉・魚はもちろんのこと、卵や牛乳およびそれらが含まれる製品を一切摂取しません。海外ではアリアナ・グランデやマドンナ、国内ではマツコ・デラックスや小室哲哉など、数々の著名人がウィーガンとして知られています。近年、倫理問題、健康への関心の高まりから、世界中でウィーガンが注目されています。

そもそもなぜヴィーガンになるのか?

ウィーガンを実践する人たちが、そのライフスタイルを選んだ理由は様々です。一つは、宗教によるものです。もともと、仏教やジャイナ教では「動物をみだりに殺してはならない」という教えがあります。そのような宗教の戒律(信者が守るべき規則)を実践するために、ウィーガンなる人たちがいます。また、動物食を生産する過程では、動物の命を奪ったり、飼育のために自由を制限せざるを得ません。また、家畜からの糞尿は良質な肥料になる一方で、河川を汚染する原因にもなるなど、環境への負荷が懸念されています。そのような動物、環境に関する倫理的な観点から、動物食を断つために菜食主義を選択する人もいます。さらに、体質的に肉食が合わず、動物食の摂取を止めたことにより健康が改善された経験から、そのままヴィーガン食を続ける人たちもいます。1995年に上映されたアメリカの映画「ベイブ」をご存知でしょうか。クリスマスのごちそう用に牧場に引き取られた子豚が、その運命を乗り越え、牧羊犬ならぬ牧羊豚となって活躍する物語です。牧場主を演じた俳優ジェームズ・クロムウェルは、この映画への出演をきっかけに厳格なヴィーガンとなり、同時に熱心な動物愛護運動家になりました。このように、ヴィーガンになるきっかけは実に様々で、時に個人の人生に大きな変化を及ぼします。

菜食主義が体にもたらすことことは何か?

インターネット上では、菜食主義の効果に関する体験談があふれています。そして、その効果の良し悪しは、実践者により大きく分かれています。このように、今だにメリット、デメリットがはっきりしていないヴィーガンですが、実際に体にもたらすものとは何なのでしょうか。現在明らかになっていることを紹介していきます。

一番の問題はビタミンB12が不足する

ヴィーガン食に関して一番の問題は、ビタミンB12が不足することです。ビタミンB12は、動物性食品にしか含まれていません。このため、卵や乳製品の摂取も避けるヴィーガンは、この栄養素を意識して摂取する必要があります。もともとビタミンは「生命活動に欠かせないもの」という意味を語源に持ちますが、中でもビタミンB12は、赤血球や神経細胞の正常な機能を維持するために必須の役割を担っています。このため、ビタミンB12の不足により貧血になったり、神経症状(手足のしびれなど)が表れたりすることがあります。妊娠および授乳中の女性ではビタミンB12の要求量が高まるので、特に注意が必要です。

メリットともデメリットもたくさん

科学的な確かさは不透明ですが、「菜食主義が体にもたらすこと」ということは多く発表されています。例えば、「消化に長時間を要するため、消化器系に負担がかかるとされる肉類の摂取をやめることで、体がすっきりする」、「肉類を消化する過程で生じる老廃物の蓄積を防ぐことができ、菜食により腸内環境が整うため、体臭改善やデトックス効果が期待できる」などがあげられます。ただし、これらのメリットの真偽を正確に検証するには、大規模な調査研究が必要です。また、ヴィーガン食を続けることによる影響は、それを実践する個人個人の体質や、食事以外のライフスタイルにも大きく左右されると考えられます。このため、実際のところ、ヴィーガンが体にもたらすことは、まだまだ未知数であるといえます。

【事実から見る】ヴィーガンは健康によいのか?

結局のところ、ヴィーガンは体に良いと言えるのでしょうか。現在確認できる事実から、ヴィーガンとして生活を送ることが健康に良いのかどうかを考えていきます。

そもそも「健康」とは?

普段何気なく使っている「健康」という言葉の意味を改めて考えてみましょう。世界保健機関(WHO)憲章の中では、『健康とは、完全な 肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。(中略)人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである』と明記されています。つまり、個人が身体的、精神的、社会的に満たされた状態のことをいいます。

肉体的に健康を損なうものではない

上の項で、ヴィーガンではビタミンB12など一部の栄養が不足しがちであることを述べましたが、それを把握し、他のもので補うことができればよいわけです。ヴィーガンは、精神的な健康を満たすために、肉体的な健康を犠牲にするようなライフスタイルでは決してありません。ウィーガンでは、ビタミンB12を含むサプリメントや、ビタミンB12が添加されたニュートリショナルイースト(乾燥させた酵母菌の粉末)などから摂取することができます。

精神面には良い影響を与えることも

ヴィーガンを続けることで、精神的に良い影響を与えるデータも存在します。米国で行われた研究「Vegans report less stress and anxiety than omnivores(ヴィーガンは雑食主義者よりストレスや不安が少ない)」)では、ヴィーガン、またはその他菜食主義に当てはまる食生活の実践者は、雑食の人(特定の食生活を実践していない人)に比べ、ストレスや不安の指標が低いことが明らかになりました。このように、無理のない範囲で菜食主義やヴィーガンを続けることは、精神的な健康の助けになるのかもしれません。

最後に…

これまで、ヴィーガンの定義から、そのライフスタイルを選ぶ背景、肉体・精神・社会的な健康に与える良し悪しに関して解説をしてきました。「健康に良いのか?」という問いに関しては、良い一面もあれば悪い一面も確認されており、また、科学的に未検証であることや、そもそも検証自体が難しい側面も多々あります。よって、現状ではその問いに明確に答えることはできません。しかしながら、「健康」の定義にもあるように、その人がヴィーガンを実践することで身体の調子が良くなり、精神的にも安定が得られ、社会の中で「菜食主義を実践する個人」として尊重されるのであれば、その人にとってヴィーガンは健康に良いといえます。結局は、その良し悪しの判断は我々一人一人にゆだねられているのかもしれません。

プロフィール

松田 千波(Chinami Matsuda)管理栄養士ブロガー兼ライター
管理栄養士として委託会社での病院勤務、障がい者施設経験を持つ。心理学、がんの栄養学、栄養士の働き方についてSNSとブログで発信中。

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