その症状、果物アレルギーかも…
果物でもアレルギー反応が起こることをご存知でしょうか。果物を食べて口の中や喉にかゆみを感じたり、唇が腫れたり、吐き気や腹部の不快感が現れたりしたら、ひょっとしたら果物アレルギーかもしれません。重篤な場合、呼吸困難、血圧の低下や意識障害を伴うアナフィラキシーショックを起こすこともあります。果物アレルギーを発症する可能性があるのは子どもだけではありません。それまで普通に食べていても、大人になって症状が起こることもあるのです。そこで今回は、果物アレルギーについて詳しく解説していきます。
果物アレルギーとは?
まず始めに、果物アレルギーとはどんなものなのかについてご紹介します。その名の通り、果物を食べてアレルギー症状が起こるものというのはわかりますが、具体的に見ていきましょう。食物アレルギーには「「食物アレルギー関連の乳児アトピー性皮膚炎」、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」、「新生児・乳児消化管アレルギー」、「口腔アレルギー症候群」 といった種類があります。このうち、果物アレルギーは口腔アレルギー(正しくは口腔アレルギー症候群ですが、この記事では口腔アレルギーと呼びます)という種類のアレルギーです。では一体口腔アレルギーとは何なのか、症状や特徴を次項から解説していきます。
口腔アレルギーは短時間で症状が出る
果物アレルギーの症状については冒頭でお伝えしましたが、ここで口腔アレルギーの症状を改めて確認していきましょう。直接食物が触れた口の中や唇の粘膜が腫れて違和感やしびれを覚え、顔のむくみや蕁麻疹、腹痛、喉が詰まるような感覚が起こるのが口腔アレルギーの症状です。目や鼻に花粉症に似たかゆみなどの症状が現れることもあります。耳の奥にかゆみを感じる方もいます。気管支喘息発作(呼吸困難)やアナフィラキシーショックを起こす程重篤な場合もありますが、比較的軽い症状であることが多いと言われています。また、口腔アレルギーは、原因食材を食べてからおよそ5~15分以内という短時間で症状が現れるのが特徴です。症状が現れるのも短時間ですが、適切に処置し、軽い症状であれば治まるまでに要するのも短時間であることが多いと言われています。
果物アレルギーの原因は花粉症かも
果物アレルギーは花粉症との関連が深いと言われています。花粉症を引き起こす原因となるたんぱく質の構造と果物に含まれるアレルゲン(たんぱく質)の構造が似ているものがあるというのがその理由です。花粉症の原因となる植物にもハンノキやシラカンバ、ブタクサ、スギなどの種類があり、ある花粉にアレルギーを起こした場合、その花粉のアレルゲンと似た構造のアレルゲンを含む果物に対してもアレルギー反応が出やすくなってしまうのです。この反応は「交差反応」と呼ばれています。したがって、果物アレルギーの原因は花粉症であることが多いのです。既に花粉症と診断されている方が果物を食べてアレルギー症状を起こした場合、口腔アレルギーと診断されます。花粉症に悩む日本人は3人に1人とも言われています。近年では小学校低学年の児童にも花粉症患者がいるほどです。平成10年から平成20年の10年間のデータでは、約10%も患者数が増加したことがわかっています。花粉症患者数の増加に伴い、口腔アレルギーも増加傾向にあります。
花粉と似た構造のアレルゲンと果物一覧
花粉のアレルゲンと果物に含まれるアレルゲンの構造が似ているものがあることから、花粉症と果物アレルギーとの関連が深いことをお話ししました。ここでは、どの花粉とどの果物のアレルゲンの構造が似ているのか、花粉とそれに対応する果物アレルギーを一覧でご紹介します。
シラカンバ(白樺)はバラ科の果物アレルギーに…
シラカンバのアレルゲンと、バラ科の果物のアレルゲンは似た構造をしています。シラカンバが原因となる花粉症を発症する方は、バラ科の果物に対してアレルギー反応を起こす可能性がありますので注意が必要です。該当する果物を以下にまとめます。
- リンゴ
- サクランボ
- アンズ
- ナシ
- モモ
- イチゴ
- ウメ
- ビワ
- プルーン
- カリン
- マルメロ
- ネクタリン
ブタクサはウリ科の果物アレルギーに…
ブタクサのアレルゲンと、ウリ科の果物アレルゲンは似た構造をしています。ブタクサが原因となる花粉症を発症する方は、ウリ科の果物に対してアレルギー反応を起こす可能性がありますので注意が必要です。該当する果物を以下にまとめます。
- スイカ
- メロン
また、ウリ科ではありませんが、バショウ科であるバナナも、ブタクサのアレルゲンと似た構造のアレルゲンを持っているので、注意が必要です。
イネはウリ科の果物アレルギーに…
イネ科の植物の代表であるカモガヤ、オオアワガエリのアレルゲンも、ウリ科の果物のアレルゲンに似た構造を持っていますので、ウリ科の果物に注意が必要です。
- スイカ
- メロン
また、ウリ科の他にもカモガヤが原因の花粉症の方はミカン科、オオアワガエリが原因の花粉症の方はマタタビ科の果物にも注意してください。
- オレンジ(ミカン科)
- キウイ(マタタビ科)
花粉と関係がある食材は?口腔アレルギー一覧表
ラテックスアレルギーの場合も…
果物アレルギーと関連があるものとして、「ラテックスアレルギー」が挙げられます。ラテックスアレルギーとは、天然ゴム製手袋や炊事用手袋、絆創膏、おしゃぶり、スポーツ用具などに使用されているラテックスゴムに対してアレルギー症状、を起こすアレルギー疾患です。ゴムの樹液がアレルゲンとされています。このアレルゲンが手袋から溶け出し、接触した部位に蕁麻疹が見られる、全身に蕁麻疹が見られるといった症状が見られます。アレルゲンを吸着しているパウダーを吸引することでもアレルギー反応を起こすことがあり、喘息発作や結膜炎、鼻炎といった症状が見られます。重篤な場合はアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
果物アレルギーとの関連とは、前述した「交差反応」によるもので、ラテックスアレルギーのアレルゲンの構造と似た構造をもつアレルゲンを含む果物に対してアレルギー反応を起こします。これを「ラテックス・フルーツ症候群」と呼び、口腔アレルギーの一つです。ラテックス・フルーツ症候群の症状は、原因食材を食べると口の中や唇が腫れる、蕁麻疹が現れる、腹痛や喉の詰まりを感じるといったものがあります。
「ラテックス・フルーツ症候群」に関係する果物
ラテックス・フルーツ症候群患者がアレルギー反応を起こす可能性のある果物を以下にまとめます。
- アボカド
- キウイ
- バナナ
- パイナップル
- パパイヤ
- イチジク
- メロン
- マンゴー
- 栗
- モモ
- リンゴ
このうち、アボカド、栗、バナナ、キウイが特にアレルギー反応を起こす頻度が高い「ハイリスク群」とされています。果物だけでなく野菜でもアレルギー反応を起こすことがあります。該当の野菜は以下の通りです。
- ニンジン
- セロリ
- ジャガイモ
- トマト
これらの食材は、ラテックスアレルギー患者が摂取する際には十分注意が必要です。
予防法や治療法は確立されていない
果物アレルギーには予防法はあるのでしょうか。また、どのような治療が必要なのでしょうか。順にご紹介します。
① 予防法について
医療機関で行うような果物アレルギーの具体的な予防法はまだ確立されていません。日常生活の中で、個人で気を付けていくというのが現状です。既に花粉症やラテックスアレルギーと診断されている、もしくは疑いがある場合は注意が必要になります。体調の変化には常に気を配り、少しでも違和感を覚えたらそれがどのような症状であったか、食事の中に心当たりのある食品はあったかなどを記録しておくようにしましょう。
② 果物アレルギーの診断と治療について
万が一、果物アレルギーと疑われる症状が見られたら、速やかに受診し、診断・治療を受けましょう。前述のように、「どのような症状であったか、心当たりのある食品の有無を記録しておく」ということができていると、受診の際に医師に適切に状況を説明できますのでスムーズです。果物アレルギーの診断については、花粉症に罹患しているかの既往歴などを知るための問診や、皮膚試験、血液検査が行われます。確定診断のため、新鮮な食品の舌下投与、つまり原因食品と思われる食品を実際に摂取する「経口負荷試験」を実施することもあります。治療の基本は「原因食品の除去」です。いわゆる「除去食」のことで、原因食品が明らかになったらその食品を含まない食事をする、というものです。除去食を継続しながら、医師による判断で経口負荷試験を行ったり血液検査を行ったりしてその後の治療方針を決めていきます。症状が現れたときのために「抗ヒスタミン薬」や「ステロイド外用薬」といった薬を処方される場合もあります。医師の説明をよく理解し、指示に従って治療を進めていきましょう。
③ 「個人で気を付ける」とは
果物アレルギーは医学的な予防法はないため、個人で気を付けていくというお話をしましたが、具体的にはどのようなことに気を付けていればよいのでしょうか。個人でできる予防として、アレルギー症状を起こす可能性のある果物を食べないようにすることが大切です。そのためには原因食品になりうる果物は何かといった知識が必要になります。花粉症に罹患している場合、どの植物の花粉に対するものなのかを確認し、交差反応を起こしやすい果物を把握しておきましょう。ラテックスアレルギーに罹患している場合も同じことが言えます。
加熱をしたら食べれる可能性も…
果物アレルギーの原因食品となる果物も、加熱をすれば食べられることがあります。例えば、りんごを生のまま食べるとアレルギー症状が現れても、ジャムやアップルパイなど加熱をしているものであれば症状は見られない、といったケースです。これは食品中のたんぱく質の性質に理由があります。アレルゲンの正体はたんぱく質であり、たんぱく質は加熱をすることにより構造が変化する性質を持ちます。これを「たんぱく質の変性」と呼びます。たんぱく質の構造が変わると、アレルゲンとして認識されなくなりアレルギー症状が起こらないということになります。一方で、加熱をしても構造が変わらないたんぱく質も存在し、そのたんぱく質を含む果物は加熱してもアレルギー症状が起こってしまいます。カバノキ科のシラカンバやハンノキといった植物が原因の花粉症患者は、果物の他にマメ科の大豆、ピーナッツに対してアレルギー反応を起こす可能性がありますが、特に大豆のたんぱく質は熱に強いためたんぱく質の変性を起こしにくく、加熱をしてもアレルギー症状が見られやすい食品ですので注意してください。
まとめ
果物アレルギーは口腔アレルギーであり、花粉症やラテックスアレルギーとの関連が深いことから、花粉症やラテックスアレルギー患者は果物を食べる際には注意が必要です。短時間で症状が出ることが多く、医学的な予防法は確立されていません。疑わしい症状が見られたら速やかに受診し、医師により果物アレルギーの診断を受けた場合は指示に従って除去食及びその他治療を進めていきましょう。どのような果物により症状が出る可能性があるのかを予め把握しておき、その食品を避けた食生活を送ることが、個人ができる予防になります。加熱をすれば食べることができる果物がほとんどですが、中には加熱をしても症状が現れる食品もありますので注意が必要です。
プロフィール
- 病院管理栄養士を7年間経験後、妊娠を機に退職。現在はオンラインの特定保健指導やレシピ作成を中心に業務を行っている。子供ができてからは、食の安全性や機能性をより考えるようになり「1食1食丁寧に」を心がけている。
最新の投稿
- ここから始まる食の安全2021年6月25日ピーナッツアレルギーは治る!?
- ここから始まる食の安全2021年3月28日炭水化物抜きダイエットの種類は?メリット・デメリットを紹介
- ここから始まる食の安全2020年2月14日太りにくい食べ方とは?1日3食でも順番や食べ方の工夫でダイエットに!
- ここから始まる食の安全2020年2月13日アレルギー27品目