塩分取り過ぎたらどうなる?体への悪影響や対処方法を解説!

日本人は塩分をとりすぎる傾向に

日本人の食事摂取基準 (食塩相当量) が2020年からさらに厳しくなり18歳以上は男性が7.5グラム未満、女性が6.5グラム未満に変更になるのはご存知でしょうか。しかし、WHO(世界保健機関)ではより厳しい5グラム未満を推奨しています。その背景には食塩の取りすぎが心臓病や脳血管疾患、腎臓病などの原因になることが明らかになっているからです。
平成29年度の摂取量は男性が10.8グラムで女性は9.1グラムで10年前の男性12.0グラムと女性10.3グラムから優位に減少しています。(国民健康・栄養調査)。その結果、日本人の平均血圧は減少し脳血管疾患の死亡率も減少しました。しかし、食塩摂取量はここ数年ではほとんど変化が無い状況です。
日本人の塩分摂取が多くなる要因に塩分の多い調味料の醤油や味噌を多用していることなどが考えられます。ご飯食は塩と相性が良いのでご飯食の国のタイや韓国、シンガポールも同様に食塩の摂取量が高くなっています。

「塩分のとりすぎ」がもたらす5つの影響

塩分はナトリウムイオンと塩化物イオンから成り立っています。体内のナトリウムは神経の伝達や筋肉を動かす信号などに使われている重要なミネラルです。体の中のナトリウムのバランスが崩れると様々な影響が出てしまいます。塩分を取りすぎてしまうと高血圧だけでなく5つの悪影響が現れることがあると知られています。

①体のむくみがひどくなる

体のなかのナトリウムの濃度は厳密にコントロールされています。塩分を普段より多く摂ると血液中のナトリウムの濃度が上昇します。体にはすぐにナトリウムを外に出す機能がないため、喉の渇きを引き起こします。その結果、水分をとったりすることで体内のナトリウムの濃度を薄めて濃度を保とうとします。水分の摂取により体液量が増えることでむくみがでることがあります。

②高血圧になってしまう

塩分と血圧の関係は完全には解明されておりませんが、塩分濃度が高くなると体液量が増えるため、その水分すなわち血液を送り出すために心臓の働きが活発になります。その結果、血管に負荷がかかり血圧の上昇を招くと言われています。また塩分摂取量によって大きく血圧が変化するひととそれほど影響を受けないひとがいることも分かっています。またメタボリックシンドロームの方はより塩分の量が血圧に与える影響が大きいと報告されています。

③骨粗鬆症を招いてしまう

腎臓は不要な成分を外に出す働きだけでなく必要なものを再び体内に戻すという重要な働きをしている臓器です。ナトリウムが過剰になると腎臓でのカルシウムを再び体に戻す機構が抑えられることでカルシウムを排出されてしまいます。その結果、骨を作るのに必要なカルシウムが減ってしまうことで骨の形成が上手くできず骨粗鬆症のリスクが上昇してしまいます。

④胃がんに繋がる

胃がんの最大の原因はピロリ菌の持続感染と言われています。ピロリ菌に感染した人はすべて胃がんになるわけではないのですが、ピロリ菌の感染にさらに塩分を多く摂ると胃がんになるリスクが増大することが報告されています。塩分お多い食事いより胃の中で塩分濃度が上昇することで胃の粘膜がダメージを受けることで胃炎が発生することが分かっているのでその影響かもしれません。

⑤認知症のリスクが上がるかも…

塩分の過剰摂取は認知症予防の観点からも重要であることが、近年明らかになってきました。過剰な塩分摂取は高血圧を引き起こし、脳の小さな血管にもダメージを与えることで脳に十分な栄養が供給されず血管性認知症のリスクを高めることが分かっています。
さらに最新の知見によると動物実験の段階ですが、塩分の多い餌をマウスに与えると認知症の病態に関係するタンパク質である変異型のタウが脳に蓄積することが報告されました。食塩の過剰摂取は。血管疾患だけでなく脳のシナプスにも影響を与えて認知症を促進する可能性があります。

どうしたらいい?塩分をとりすぎな生活へ4つの対処法

まずは塩を摂りすぎないことを心がけることが重要です。日本人はカップ麺や梅干し、漬物などから多くの食塩をとっております (国民健康・栄養調査)。自分が何から主に食塩を摂っているか確認しましょう。また塩分をとりすぎたときは体から排出することが重要です。利尿作用のあるお茶を飲んだり排出を促すカリウムを積極的にとってみましょう。

①カリウムを摂取する

カリウムはナトリウムと体の中で対をなすミネラルです。細胞の中はカリウムの濃度が高く、ナトリウムは細胞外で濃度が高くなっています。そのバランスで体の浸透圧のバランスを保っています。また2つのミネラルの行き来を利用して神経の伝達や筋肉の活動などが行われています。いくつかの研究によりカリウム摂取により血圧が減少することが報告されています。特に血圧が高めの方には積極的にとってもらいたいミネラルです。

カリウムと塩分の関係

カリウムを摂取することでがナトリウムを体の外に追い出すことができることが知られています。腎臓にはナトリウムを排出する際にカリウムを再吸収する機構が存在します。カリウムをたくさん取ると代わりに水分とナトリウムを排出します。血圧が正常な方はカリウムの摂取量が血圧に与える影響は少ない一方で高血圧の方はカリウムの摂取でより血圧が下がる傾向にあると報告されています。

カリウムが豊富な食べ物は野菜や果物

カリウムが豊富な野菜には里芋やトマト、かぼちゃ、ブロッコリーなどがあります。また果物には、バナナ、柿、オレンジ、キウイなどがあります。カリウムは乾燥させても減らないため切り干し大根や干し柿などの乾物は少ない量で多くのカリウムを補給することができます。しかし、注意も必要です。高血圧の患者さんの中には腎臓の機能が低下しカリウムが体にたまりやすくなっている方もいらっしゃるので、腎機能が不安な方は医師に相談してみましょう。カリウムが多くなりすぎることで不整脈などの症状がでることもあります。カリウムもナトリウムと同じでバランスが重要です。

②調味料をあまり使わない

先に述べましたように醤油をはじめとする調味料から多くの食塩をとってしまっています。そこで調味料の量を減らす工夫をしてみることが大切です。調味料を減らすことで味気なくなってしまうのを旨味調味料や出汁を上手く使って減塩を試してみましょう。また塩を使う際にも、精製された塩よりも岩塩やカリウムやマグネシウムなどの他のミネラルも含まれた塩にかえてみることもおすすめします。

③外食なら「少し残す」もあり

旨味が強く、塩分が高い外食ではより摂取する塩分が高くなってしまう傾向があります。塩分の多い食事では食欲が増し食事の量が増えることもわかっています。つまり塩分には食欲増進効果もあるのです。ラーメンなどの汁物は全て飲まないなど気をつけることで摂取量はだいぶ変わってきますので注意しましょう。

④塩分ファスティングに挑戦してみる

塩分を過剰に摂るとさまざまな影響がでるとご紹介しました。そこで塩分をとる量を徐々に減らしていくことが大切だと認知して頂けたと思います。その一環として塩分ファスティングに挑戦してみてはいかがでしょうか。塩分ファスティングとは塩分を断つ食事をすることです。ファスティングとはfastingで断食の意味です。

塩分ファスティングのやり方

塩分ファスティングのやり方ですが、はじめに注意として続けることで健康に影響がでる可能性があるため3日以内にすることが推奨されています。食塩が含まれている加工品などは全て断ちます。それ以外にも塩が含まれている調味料も使用しません。おのずと自分で料理をする必要がでてきますので何に食塩が含まれているか再確認する良い機会にもなります。料理するときは、出汁を使ったりスパイスやハーブ、酢などを上手に使って風味づけをして食事を楽しみましょう。

塩分ファスティングには細心の注意を!

塩分ファスティングでは体の中のナトリウムが低くなりすぎて不調がでることがあります。特に夏場や汗をかくようなことがあればより注意が必要です。不調のサインとして頭痛やしびれ、ふらつきがあります。症状があれば少量の塩分をとるようにしましょう。3日間は塩分を極力減らしますが食べる量は普段通りで1日3食しっかり摂りましょう。塩分ファスティング中はカリウムが多いフルーツや野菜を積極的にとりましょう。むくみの解消にはより効果的です。ただし水分を溜め込む原因にもなる炭水化物は控えめにしましょう。間食には塩分ゼロのナッツなどがおすすめです。水分はしっかりとってナトリウムの排泄を促すことも大切です。1日2リットルを目安に水分を摂りましょう。

一番大切なのは、食品の減塩

人類が陸で生活するようになり、食塩の摂取は必須になりました。そこで塩に対して強い欲求を持ち、簡単に排出できないような機構を備えています。しかし、簡単に手に入るようになり摂りすぎによる弊害がでています。塩分を摂りすぎたときにカリウムをとることを紹介しましたが、カリウムをとることで帳消しになるわけではありません。その効果は限定的で、全ての方に効果があるわけでもありません。他の栄養素の違いでナトリウムが排出される量にはほとんど影響を与えないと言った報告もあります。最も大事で、効果的なのは摂る食塩の量を減らすことです。まずは使用する食塩や調味料を減らしてみましょう。汁ものを全て飲まないなどできるところからはじめましょう。

プロフィール

山﨑 麻未(Asami Yamasaki)管理栄養士
病院管理栄養士を7年間経験後、妊娠を機に退職。現在はオンラインの特定保健指導やレシピ作成を中心に業務を行っている。子供ができてからは、食の安全性や機能性をより考えるようになり「1食1食丁寧に」を心がけている。

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