ジャイナ教とは?
ジャイナ教は、およそ2500年前、仏教とほぼ同時期にインドで開かれた宗教です。信者の人口の殆どがインドに在住していますが(430万人ほど)、ガーナ、イギリス、カナダ、アメリカなどにもジャイナ教コミュニティが存在しています。特定の信仰の対象となる神は存在せず、自助の宗教として知られます。輪廻転生の概念があり、人が死を迎えると、その魂が別の生命へと生まれ変わる(転生する)ことを繰り返すとされています。そして、自らの魂からカルマ(業)を取り除くことで、このサイクルから抜け出し、幸福な魂として永遠に存在できると知られています。この究極的な目的の達成のため、3つの宝「正しい行い」「正しい知識」「正しい信仰」を生活の中で実践し、また5つの禁忌「不殺生」「嘘をつかない」「盗みを犯さない」「性的行為を行わない」「無所有」を徹底します。
ジャイナ教の人が食べられないものは?
ジャイナ教では、植物や動物、目に見えない微生物にも魂が存在し、それは人間と同様に尊い存在であり、大切にすべきであると考えます。よって、ジャイナ教徒は地球上の資源を最小限に消費して自らを生かそうとします。このため、基本的に他の生命を奪う行為である食事に関しては、厳しい制限があります。具体的にどのような食生活を送っているのか、これから解説していきます。
ジャイナ教はベジタリアン!?
ジャイナ教では、殺生と相手への暴力は最も行ってはならない行為の一つであるため、肉、魚や卵、およびそれを原料に含んだ食材は食べることができません。このことから、ジャイナ教徒の食生活はベジタリアンと非常に近いです。ベジタリアンとは、動物性食品の摂取を極力避ける思想「ベジタリアニズム」の実践者の事をいいます。また、ベジタリアンは動物性食品の摂取に関する許容範囲で細分化され、卵または乳製品、あるいはその両方の摂取を可とするベジタリアンもいます(オボ・ベジタリアンやラクト・ベジタリアン)。卵および乳製品の摂取を禁じ、動物性食品の摂取を徹底している「ヴィーガン」が、ジャイナ教徒の食生活に近いかもしれません。しかし、下記で解説する通り、ジャイナ教の考え方から、野菜でも食べてよいものとそうでないものがあり、ジャイナ教徒は特殊なベジタリアンであると言えます。
ジャイナ教は生物全般がダメ
先の項でも述べたように、ジャイナ教徒にとって、動物を傷つけ、命を奪って食べるという行為は御法度です。牛や鶏といった肉はもちろんですが、「可食部がその植物の生命を奪ってしまうような野菜」を食べることも禁じています。また、他の生命を脅かす行為は食事にとどまりません。私たちは日々暮らしの中で、思いがけず他の生命を奪ってしまうことがあります。ジャイナ教徒は、虫を誤って殺してしまわないように、「口を白いマスクで覆い、虫を吸い込まないようにする」ことや、「歩く時は虫を踏まないよう、ほうきで道を掃いてから歩く」など、不殺生を徹底しています。
葉野菜と茎野菜のみが基本!根菜はNG!
前項で、ジャイナ教徒は特殊なベジタリアンであると述べました。野菜の中でも、食べてよいものとそうでないものがあります。ジャイナ教徒が摂取を禁じている野菜は、にんにく、玉ねぎなどの根菜類です。この理由は、「これらの野菜を掘り起こす際、土壌中の虫を殺めることになる」こと、「可食部である根は、野菜の命の源であるから、これを食べることが野菜の殺生になってしまう」ことからです。ジャイナ教徒が口にできる食材には、例えば、トマト、穀物類(ごはんやパン)、豆類、キュウリ、果物、ナッツ類、葉物野菜、オクラなどがあげられます。
ジャイナ教は調理にも気を遣う
さらに、ジャイナ教は調理にも気を遣います。 厳格なジャイナ教徒は、誤って虫を殺さないように、火を使って調理することを避け、また調理と食事は日中(手元の明るい時間帯)に済ませます。蛍光灯など、電気の光に寄ってきた虫が料理の中に入るのを避けるためです。
ジャイナ教の人をもてなすには?
日本人のライフスタイルとははるかに異なる生活を送るジャイナ教徒を日本の一般家庭でもてなすことは、とても大変なことであると考えられます。また、信者によって食べてよいものが異なることがあるため、料理を作るのには事前に綿密なインタビューが必要でしょう。例えば、「カリフラワーやブロッコリーなどは、その構造から虫が入りやすい」、「トマトは野菜の元になる種が多く含まれる」、「牛乳を得るために牛を殺すことはないが、牛に苦痛を与えることになる」などの理由で摂取を禁じている人もいます。そのため、ジャイナ教徒向けのレストランなどに行く方が、お互いにストレスがなく、リラックスした状態で互いを理解するよいきっかけになるのではないでしょうか。
まとめ
これまで、ジャイナ教の教え、それを実践するための食生活などを紹介してきました。生命に優劣はなく、他の生物の命を奪うことを可能な限り避けて生活する「不殺生」の教えが最大の特徴であるジャイナ教は、「世界で最も平和な宗教」として紹介されることもあるほどです。天然エネルギーの枯渇、環境汚染などが世界規模で問題となっている現代において、今後ジャイナ教の存在がますます注目されるようになるでしょう。人間が生きることにより地球への負荷がかかり続けている今日、彼らのライフスタイルから、多くの事を学ぶことができるはずです。日本でも少しずつ、ジャイナ教についての認知と理解が広まっていけばよいですね。
プロフィール
- 管理栄養士として委託会社での病院勤務、障がい者施設経験を持つ。心理学、がんの栄養学、栄養士の働き方についてSNSとブログで発信中。
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